現代の医療現場の実際と医師、患者について

病院では長時間待たされて診察は3分だけ!こんなことよくありませんか?

3時間待ちの3分診療が当たり前になってしまった

私たちの体は丁寧に見てもらうことはできないのでしょうか

これが現代医療の実情

みなさんがイメージするドクターの印象はどんなものでしょうか?開業医や、市中の病院の外来で見かける医者のイメージは、おそらく白衣を着て、手術や検査を行ない、薬を処方するというものだと思いますが、やたらとあわただしく忙しそうだという印象が非常に強いのではないでしょうか。

まさしくそのとおり、ほとんどの医者は実に忙しくあわただしい毎日を送っています。かりに、一人の患者さんにじっくりと向き合って納得のいくまでかかわってあげたいと思っていたとしても、時間の制約がその気持ちに水を差しますし、とにもかくにも物理的にも極めて難しいのが実情です。ましてや、ゆっくりと物事の本質に考えをめぐらす余裕など毛頭ないというのが現状だと思います。

だから、当然の帰結として、やむにやまれず「3時間待ちの3分診療」になってしまうのです。「3時間待ちの3 分診療」とは、大学病院などの総合病院にやたらと患者さんが押しかけてしまうため、「3時間もの長い間待ってやっと診察の順番が回ってきたのに、診察はわずか3分程度で終わってしまう」という現状を皮肉ったことに由来しています。ご自身で経験されている人も多いと思います。

たったの3分では、人をじっくりと診ることができないのは当たり前です。まさに文字通り「見る」だけです。

ところで、開業医、あるいは市中病院の勤務医が1日に外来で診る患者の数は平均どれくらいか、みなさんはご存じでしょうか? 統計の取り方にょって多少のばらつきはありますが、およそ50~60 人くらいです。ちなみにその数は、米国に比べると約5倍にもなります。

数あるデータの中でもよく引用されるOECD(経済協力開発機構)のデータをここで紹介しましょう。日本の医者1人が、年間に診察する患者数はおよそ8500人、それに対してOECD平均は2421人です。つまり日本の医者は欧米の医者に比べて、約3,5倍もの患者さんを診察しているのです。

しかも外来患者1人当たりの診察料の平均が、日本が7000円なのに対して、米国は6万2000円、スウェーデンはなんと8万9000円で、日本は極端に低いのです。つまり日本の医者が非常に多忙であることと、薄利多売の日本の医療構造が見て取れるかと思います。言い換えますと、日本の医者は、日本の医療システムが薄利多売構造になっているために、多数の患者さんを診なければやっていけないのです。

1日に50人以上もの患者さんがおしかけてくるとすれば、はなはだ失礼な言い方になりますが、「診る」というよりも、どちらかと言うと「さばく」というニュアンスに近いかと思います。

一方、日本の医者も欧米の医者も報酬はほぼ同じですから、結局は日本の医者は非常に忙しい思いをしているということになります。また、逆に言えば、50~60 人くらいは診ないと経営が成り立たないのも、日本の医療現場の厳しい一面です。

50人を診る実働がどれくらいのものなのか、言うのは簡単ですが、やってみると非常に大変です。ただ50人と面接するだけでもけっこうな労働です。まずは笑顔であいさつし、さっと要領よく話を聞いて、診察をして、検査のオーダーを出して、薬を処方します。しかも最近は電子カルテになっていますので、間違いなくコンピューターに人力しながらすべての過程を行なわなければいけません。患者さんを見たり、画面を見たりとおおわらわです。そしてにこやかにあいさつをして一連の診察手順を抜かりなく終えるのです。

それを1日に50回から60回線り返します。これが平均的な医者の仕事ですが、なかなか楽な仕事ではありません。その上、勤務医の場合には手術や検査や病棟での仕事もあります。開業医も往診や検査業務が毎日のようにありますので、時間の余裕などまったくないのが実情です。

患者さん1人1人のことを親身におもんばかれなどと言われたとしたら、誰だってギブアップしてしまいそうです。私が外来診療をやっていた際、季節によって多少は異なるのですが、感冒風邪ひき)、高血圧、糖尿病、高脂血症、痛風、心身症、うつ、腰痛、肩こり、頭痛、便秘、不眠、肥満(ダイエット)、ぜん息、アトピーなどで受診される方が、95%以上を占めていました。

1日に多いときで100人近く診ることもありましたが、平均1日50~60人くらいでした。それでも実働時間が午前と午後でそれぞれ3〜4時間くらいですから、必然的には1時間に10人くらいは診る必要があります。たいていは時間をオーバーして看護師さんの顰蹙を買うのが日常でした。

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